<今月の禅語>
開門落葉多(全唐詩・無可上人の詩一節)
承福寺「にこにこ掲示板」より −教えてください 沙奈恵− 学園祭の茶席に「開門落葉多」のお軸が掛かっていたものですが、読み方は 分ったのですが、意味を尋ねてもただ読んだ通りしか誰も応えられませんでした。 なんだか気になっていたとき、たまたま、そちらのHPで和尚様が禅語教室の 先生されていることを知りましたので、もしかして教えていただければと思い ました。 |
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先月末に、HPの掲示板にこの句についての問い合わせが あり、ちょうどよい季節とタイミングだったので、掲示板で 応えずこの欄でこの語を回答することにしました。 聴雨寒更盡 雨を聴いて寒更尽き 開門落葉多 門を開けば落葉多し 「開門落葉多」はよく知られる対句の後半の語であるが、 どちらもそれぞれに茶掛けとして用いられる。寒更とは 夜更けの薄ら寒い様を言いう。 秋深き草庵のあばら家に閑居して、段々と寒さもくわわり 侘しい思いも募る夜長、せんべい布団に横たわって寝む。 うとうとと眠りながら天井を通してパラパラと屋根に当たる 雨の音が伝わって聴こえる。寒い夜更けである。深く眠れ ないまま、雨音をききつつもいつのまにか寝入ってしまった。 |
早朝に目覚め、いつものように戸を開け、庭の潜り戸を開いてみれば、秋風に せかされた落ち葉がかさこそとうごめく。なぁーんだ、きのうの夜の雨の音と 思ったのは、実は木の葉が散って屋根にあたる音だったのか。という、更け往く 秋の幽寂な風情と共に、そのもの侘しさを却って味わい深く、楽しんでいる 道人の心境がうかがえる語である。 この語を元にして「秋の夜に雨と聴こえて降りつるは風にみだるる紅葉なり けり」(拾遺集)と紀貫之は詠ったとされる。 |
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ただ、禅語としての解釈となれば、単に秋の 風情だけでなく、諸行無常の心を感じ取り、 また寒更尽きる時を凌ぐと言うところから、 徹っしきり、尽くしきったところに開ける 新しい悟りの境涯をあらわした言葉として 用いられることにも思いを馳せたい。 |
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私は実は屋根裏暮らしをしている。寺として庫裡があり、いくつかの部屋は あるのだが、寺行事や人の出入りがあって、住職の個室と言うのか裸で昼寝の 出来る部屋がなくていささか窮屈な思いであった。遂に二階の壁を破りあばら 家風の天井部屋を作った。張木や桁木があって頭を打つたりするが、床面積は 20畳ほどもあり、わが書斎兼寝室にして結構気分快適に過ごしている。 ただ、天井は直接屋根になっているため、雨の音が瓦を通して伝わって聞こえ、 暑さ、寒さもストレートに伝わり、自然環境の厳しさを肌で感じつつ、私は 雨音を木葉に置き換えて「開門落葉多」の語を味わいつつ、不風流を最高に 楽しんでいる。 |