<今月の禅語>     〜朝日カルチャー「禅語教室」より〜


   四海隆平煙浪静 斗南長見老人星 (虚堂録)

             四海隆平にして煙浪 (えんろう) 静かなり
                斗南
(となん) 長く見る老人星




 昔、中国を中心とする回りには四つの海があるとされた。その四海という

ことは全世界ということを表す。即ち「四海隆平にして煙浪静かなり」とは

天下泰平という意味になる。今流に言えば世界平和であり、穏やかな世界

である。争いの波も戦火の煙も無い静かな状態である。


 斗南とは北斗七星から南の方ということで世間一般、天下

全体を指し、老人星とは南極星の別名で寿老人のも譬え

られる。この星は人の寿命を司るとされ、まことにおめでたい

星とされる。南極星
(なんきょくせい)とは、天の南極または

それに非常に近い位置に存在する明るい恒星のことである。

北極星と違い、2006年現在これに該当するものは存在しない

という。しかし、中国の春秋、三国史時代の当時は軍師、武将

たちはこの星の輝きを見ては戦況を占い作戦を考えたり、

自らの運命を占ったことだろう。

 そのめでたい老人星が、今明るく輝き天下泰平を見守ってくれていて、その

中に暮らす我々も穏やかな心境でいられることはありがたいものである。

とはいえ、現実の世の中はいじめ、自殺、虐待、事件、事故様々な暗く悲しい

ニュースがあふれている。自然環境の変化による戸惑いに社会はまた一層不安を

募らせている現実もある。だが、こんな世の中だからこそ一喜一憂することなく、

むしろ大局を見、大自然の動きに順応し自らの不動の心を養いたいところである。




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